【映画感想】グリーンブック
ヴィゴの腹が…ああ…腹ァ…
Amazon商品紹介でプライムビデオが出てこなくなってる。
なんでさー。
さて、今回の感想グリーンブック、昨年のアカデミー賞で作品賞を含む三つの賞を受賞しており、ご存知の方も多いでしょう。
70年代アメリカ、黒人差別がごく普通にまかり通っていた南部地方に、あえてコンサートツアーに赴くアフリカ系ピアニストドン・シャーリー(ドク)と、その護衛兼運転手として雇われたイタリア系ブロンクス育ちのトニー・ヴァレロンガ。
気性も境遇も違う二人が、ぶつかりながら2ヶ月間ツアーをしながら自動車で旅をする、ロードムービーです。
見る前は、ドクはもっと聖人のようなキャラで、トニーはありとあらゆる異端を差別するゴリゴリの差別主義者で、そこからわかり合っていくのかと思ってたんですが、違いましたねー。
たぶん観客はトニー視点になるよう作られているんだと思うんですが、最初ドクの印象があまりよくないんですよ。豪奢な部屋で石油王みたいな格好で君臨してる、高慢な知識人、て感じで。
それが旅の進行とともに、彼のピアノの演奏を聴いて感銘を受け、旅先で受ける酷い仕打ちに(こんなに?!)と驚き、それに対抗するに常に品位をもってあたるという高潔な信念を知ります。
そして成功して裕福な黒人という立場ゆえ、黒人の側にも白人の側にも居場所がなく、家族とは疎遠で、かつゲイであるという、彼の深い孤独に触れることになるのです。
トニーに対しても、最初は粗野で小狡いおっさんだなーという印象が、「なんだ面倒見のいい頼れるおっさんじゃん」に変わるのが気持ちよいですね。
ドクが「男といちゃついていた」から捕まった時、トニーから嫌悪や拒絶の態度がくるかなと思ったら、逆だったのが驚きでした。タオルくらいかけてやれ、服を着させろ、人として尊厳を守ってやれと主張するんです。
あんなこと知りたくはなかったろう、と自虐するドクに、トニーは「ナイトクラブで働いてたから、色々見てきてる。人間いろいろあるさ」というような返事をします。
トニーは社交性のあるまっとうな大人なんですよね。
最後、自宅に戻って家族や親戚に囲まれても、あの豪奢な部屋に一人帰るドクのことを考えてしょんぼりしているトニー。
そして「寂しい時ほど、一歩踏み出さなくちゃ」というトニーのアドバイスを容れて、勇気を出して訪ねてきたドク。
彼をハグするトニーのなんともいえない安堵と慈愛に満ちた表情が、すごい好きです。ヴィゴ…腹が出ても素敵よ…(この役のために増量したそうです)
【映画感想】ノクターナル・アニマルズ
あいかわらず画面の隅々まで美意識が張り巡らされ、男性俳優がモブの一人に至るまでカッコいい。
主人公はアートギャラリーのオーナーのスーザン。
シングルマンでも登場したようなすんごい豪邸に住み、夫はアーミー・ハマー。
これだけ聞くと、序盤、友人たちに諭されるように、人が羨むような境遇に見えますが、実はこのアーミー・ハマーは浮気するアーミー・ハマーなこともあり、彼女はイマイチ幸せではありませんでした。
そんな時、アーミー・ハマーとはタイプの違う、繊細な元夫から、自作の小説が送られてきます。不眠気味のスーザンは、その小説を読み、次第にその世界に没頭していきます。
小説世界と現実世界が交互に描かれる形で映画は進行していきます。
小説は妻と娘を若いならず者に凌辱された男が復讐する話で、著者エドワードの抱える、不幸と暴力性への恐怖、悔恨と己への嫌悪や憐憫に満ちていて、まあシンドイです。
アメリカの町外れ(?)本当に荒凉としてて、日本の田舎どころの騒ぎじゃないな…って思いました。あんなところにケータイも通じない状態でポイされたら死んじゃう。
それから、ならず者のトイレシーンが衝撃的すぎて、その場面、刑事さんが話してることが一個も頭に入ってきませんでした。あれはちょっと見てほしい。何あのトイレ。
小説を読み終わったスーザンは元夫エドワードに「会いたい」とメールを送り、応諾を得て、ディナーの席をセッティングするのですが、結局エドワードは現れませんでした。お腹すくし、私なら1時間で帰っちゃう…高級日本食…
若い頃は保守的な両親(とりわけ母親)を嫌い、心のままに生きようとしたスーザン。
しかし、彼女が育った環境は、自分が思うより深く価値観として根差していたのでしょう。一時的な質素ならともかく、そこにずっと留まることは、彼女には耐えられないことだったのです。
そうして選択して選んだ道の末がこれ。
確かに生活の不安はない。割り切ってセレブ生活を生きられるならそれも良さそうだけど、どうみても若い頃きらきらしていたスーザンの瞳は、今どんよりしている。
この映画、君に読む物語の別ルートエンドだなぁと思いました。つらい。
【映画感想】白雪姫と鏡の女王
アーミー・ハマーを色々して楽しむ映画。かわいい。
パッケージの印象から、ケネス・ブラナー監督のシンデレラをラブコメ風にしたくらいの品のある感じを想像してたんですよ。
したら、意外と毒っ気がある映画で、そこがすごく楽しかったです!
ストーリー自体は、父王を亡くした白雪姫が、悪い継母に森に追いやられ、7人の小人の助けを得て、王子と結ばれて幸せになるという、一般的な白雪姫の物語そのまま。
キャラクターがみんな割とアレなんですよ。
女王はイケメンマッチョとお金が好きな熟女。
王子(アーミー・ハマー)は恵まれた若者らしく傲慢でチャーミングなうっかりさん。
白雪姫は最初こそ小鳥さんに餌をあげ、継母の冷遇にしおれるお姫様だったけど、小人達の郎党に加わってからは、なめた態度を取る王子を馬に蹴飛ばさせて「どうしてそんなにかわいいの?」と頬をはさんで囁いてからぶん殴って昏倒させる強キャラに。
そんな濃い人たちが、美しいセットと故石岡瑛子氏の衣装を纏ってわちゃわちゃするのです。見てるだけでたのしい。
特にアーミー・ハマー。ワンちゃんになってる彼を見るとは思っても見なかった…すごい破壊力。大型犬。あとなにかというと、盗賊(小人たち)に身ぐるみをはがされて、股引みたいな下着姿になるのでとてもかわいい。
白雪姫と剣で戦うシーンもあって、そこは相手をお姫様と侮った立ち回りをするのが、これまた憎たらしかっこよいです!好き!お尻ぺんぺんすな。
最後まで楽しく見られて、おまけにショーン・ビーンも出てきて大満足。
そして、全然知らなかったのですが、エンディングで白雪姫が踊り出します。
そう。これはインド映画だったのです。びっくり。
【映画感想】セントラルインテリジェンス
ロック様がキュートな巻き込まれバディムービー。最後には昔なつかしNG集もあってこれまたかわいいんだ。
高校時代、最優秀学生として褒め称えられていたカルヴィン。しかし大人になり、思い描いていた華やかな人生ではなく、会計士として(自分としては)ぱっとしない日々を送っていました。
そんなある日、Facebookに知らない名前からコンタクトがあり、同期のいじめられっ子ロビーだというのです。会いに行ってみると、その相手は筋骨隆々とした大男(ロック様)で、今はCIAのエージェントだというのですが…。
ロビーはかつて唯一自分に優しくしてくれたカルヴィンを宝物のように大切にしています。
たとえ今は冴えない会計士であろうと、ロビーにとっては英雄ゴールデン・ジョー(だっけ)に変わりはない。
自分の窮地を救う人物として頼り、行き詰まりを感じている人生を打開するヒントを提示する。
ああ、なんか既視感があると思ったけど、書いててわかりました。
BLの攻じゃん。昔は弱かったのに、再会したらゴージャスな攻になってるやつ。
で、天然入ってて空気読まない憎めないワンコ系のスパダリ攻だ!
【映画感想】バトル・オブ・ライジング
「ッ‼︎」のないタクティクスオウガ。もしくはリョナ控えめのヴォルフスムント。
中世マッツを堪能しました。
16世紀に実際にあったとされる民衆の領主への反乱を元にした小説「ミヒャエル・コールハース」の映画化です。
馬商人コールハースは、王妃が禁じている通行税を取り立て、従者に犬をけしかけ、彼の財産である黒馬を痛めつけるという男爵の仕打ちに憤り、何度も訴訟を起こします。
ついには妻が王妃に直訴状を届けにいくのですが、その妻が宮廷で暴行を受けて亡くなってしまうにいたり、コールハースは武器をとり、領主を襲撃するのでした。
絵面がとにかく美しい。好き!
タクティクスオウガ好きな民は是非見てほしいです。
戦意をあおるというよりは、絵画のような止め絵の美しさがあります。
マッツの美貌が光と影に彩られてたいへんなことになっています。
お話の進行は淡々としていて、説明は最小限に抑えられています。
コールハースの手勢と領主軍?が騎馬戦するときも、俯瞰のカットで表現されていて、ヒロイズムとか高揚感とか徹底して排除してる感じです。
最終的に、コールハースの訴訟は勝訴に終わるのですが、反乱を起こし、民の平穏を乱した咎で、斬首されてしまいます。
もう、王妃様なんなの…マッツの尻見物代で命くらい助けてくれたっていいじゃないの。
最後の5分くらい?刻々と死刑の瞬間が近づいてくる人間の表情を見守らねばならないのがとにかく辛い。上着をとられ、斬首台にあげられ、下着の首元を切られ、その背後に剣を持った人が現れ…辛い。精神的リョナ。
ところで何のサービスなのか、やたら男性のフルチンヌードが出てきます。この映画。
マッツの野外お風呂シーンもあるよ。王妃にアポなし訪問されて、慌ててズボン履くマッツだよ。
【映画感想】Dr.パルナサスの鏡
悪魔と聖者が終わらないゲームを繰り返す。
人間は関わらないほうがいいヤーツ。
路上で見世物小屋をしているDr.パルナサス。
彼は実は高僧で、かつて悪魔と賭けをしたために、不死の身となり、そのことを悔いていた。
そして今は娘の身を賭けて、彼のつくる鏡の世界のなかで、客が正しき道を選ぶか欲望の道を選ぶかの勝負を悪魔としているのだった。
この映画の撮影中に、かのヒース・レジャーが亡くなってしまい、彼の親友3人がその後を継いだという胸熱なサイドストーリーが。
人の顔を覚えるのが苦手な私には、どこからがヒース・レジャーでジョニー・デップでジュード・ロウでコリン・ファレルなのかわからなかったよ。
この映画、いろんな悪夢を楽しむ映画だなーと思いました。
トニーが怖い人に追っかけられて、梯子に登って、それが壊れて竹馬になって…ってどんどん展開していく感じが「こういう悪夢あるある」。
欲望の道を選んだ人が景気良く爆発してる、あの唐突な感じも悪夢っぽい。
ミニスカポリスメンズが勧誘ダンスして、ロシアンマフィアたちが「ヴェーーーーママーーー」ってロシアのおかんのスカートに逃げ込んでいくあのあたりとかめちゃ好き。
【映画感想】マローボーン家の掟
屋根裏でバルサンを焚こう。10個くらいいっぺんに。
ホラー…というよりは、サスペンスになるのでしょうか。
アメリカの古い屋敷(これが素敵なんだ)に母一人子4人という一家が何かから逃れるように越してきます。
近くに住むアリーという明るく魅力的な同世代の友人も現れ、美しいアメリカの田舎町での暮らしが始まるかと思いきや、ジャンル的にそうはいかないのでした。
母の死、それにまつわる相続問題。子供たちとアリーがいい子たちなだけに、彼らの暮らしに立ち込めてくる暗雲にハラハラ。マローボーン家が逃げてきたものの真相がわかった時は、怖っ!!!ってなります。
序盤に窓に銃弾を受けたときにジェーンが見せたすごい恐怖の表情、あの意味がわかる時の感じが、もうつらい。バルサンバルサン。
この映画の白眉は、ある種の凶悪犯罪者とはどんな生き物か、というのをすごい説得力で描いてるとこでした。生命力が上記を逸したレベルで強くて、普通に育った人間が、無意識化に持っているブレーキが存在しない感じ。屋敷になにかいる演出より、こっちのが怖かった…
ともあれ、1970年代のアメリカの郷愁を誘う美しい風景がたまらない映画です。
あとチャーリー・ヒートンくん!めちゃ好みの顔!