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映画や本の感想

【映画感想】ノクターナル・アニマルズ

 

ノクターナル・アニマルズ(吹替版)

ノクターナル・アニマルズ(吹替版)

  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: Prime Video
 

 「シングルマン」のトム・フォード監督の第2作。

あいかわらず画面の隅々まで美意識が張り巡らされ、男性俳優がモブの一人に至るまでカッコいい。

 

主人公はアートギャラリーのオーナーのスーザン。

シングルマンでも登場したようなすんごい豪邸に住み、夫はアーミー・ハマー

これだけ聞くと、序盤、友人たちに諭されるように、人が羨むような境遇に見えますが、実はこのアーミー・ハマーは浮気するアーミー・ハマーなこともあり、彼女はイマイチ幸せではありませんでした。

そんな時、アーミー・ハマーとはタイプの違う、繊細な元夫から、自作の小説が送られてきます。不眠気味のスーザンは、その小説を読み、次第にその世界に没頭していきます。

 

小説世界と現実世界が交互に描かれる形で映画は進行していきます。

小説は妻と娘を若いならず者に凌辱された男が復讐する話で、著者エドワードの抱える、不幸と暴力性への恐怖、悔恨と己への嫌悪や憐憫に満ちていて、まあシンドイです。

アメリカの町外れ(?)本当に荒凉としてて、日本の田舎どころの騒ぎじゃないな…って思いました。あんなところにケータイも通じない状態でポイされたら死んじゃう。

それから、ならず者のトイレシーンが衝撃的すぎて、その場面、刑事さんが話してることが一個も頭に入ってきませんでした。あれはちょっと見てほしい。何あのトイレ。

 

小説を読み終わったスーザンは元夫エドワードに「会いたい」とメールを送り、応諾を得て、ディナーの席をセッティングするのですが、結局エドワードは現れませんでした。お腹すくし、私なら1時間で帰っちゃう…高級日本食

 

若い頃は保守的な両親(とりわけ母親)を嫌い、心のままに生きようとしたスーザン。

しかし、彼女が育った環境は、自分が思うより深く価値観として根差していたのでしょう。一時的な質素ならともかく、そこにずっと留まることは、彼女には耐えられないことだったのです。

そうして選択して選んだ道の末がこれ。

確かに生活の不安はない。割り切ってセレブ生活を生きられるならそれも良さそうだけど、どうみても若い頃きらきらしていたスーザンの瞳は、今どんよりしている。

この映画、君に読む物語の別ルートエンドだなぁと思いました。つらい。